老後の地方移住で、考えておきたいこと

移住

地方移住と聞くと、自然が近くて、家が広くて、都会より生活費を抑えられる。
そんな暮らしを思い浮かべる人は多いはずです。

大阪から福岡へ移住した私も、地方へ移ることにはかなり肯定的です。
都会にいた頃にはなかった余白が生まれるし、住む場所を変えたことで気持ちが楽になることもあります。

ただ、老後の移住となると、景色や住宅価格だけで決めるのは少し危険を感じます。

私がいちばん気になるのは、自動車に乗れなくなった後も、そこで暮らし続けられるかどうかでした。

3年で移住先を離れた夫婦

2026年8月、資産形成ゴールドオンラインで紹介されたのは、都市部から山間部へ移った74歳の夫と71歳の妻の事例です。夫婦は1,200万円で庭付きの中古住宅を購入し、年金は月24万円ほど、預貯金も約2,000万円ありました。お金が理由で困っていたわけではありません。(資産形成ゴールドオンライン 2026年8月

問題は移動でした。スーパーまで車で約30分。病院や役場へも車が必要です。

夫が運転できる間は不自由なく暮らせましたが、移住から3年後に車庫で踏み間違いの事故を起こし、運転をためらうようになります。

妻はペーパードライバー。ネットスーパーは配達地域外で、タクシーは片道数千円、バスは一日に数便でした。

夫婦は半年悩んだ後、家を売り、スーパーと病院が徒歩圏内にある地方都市の中心部へ移りました。

この事例を読んで、老後の住まいで大事なのは、車があれば暮らせるかだけではなく、車がなくても暮らせるかどうかだと改めて感じました。

車で15分は、歩くと別の世界

地方の物件には、スーパーまで車で10分、総合病院まで車で20分と書かれていることがあります。

運転できるうちは、それほど遠い距離には感じません。私自身も車に乗るので、車で10分程度なら生活圏だと思います。

でも、その便利さには私が運転できるという前提があります。

視力や体力は年齢とともに変わります。自分は元気でも、配偶者の通院が増えるかもしれません。

どちらかが一人になったとき、送迎を頼れる相手がいなくなることもあります。

別の事例では、71歳の夫婦が、夜間や雨天の運転に不安を感じるようになり、専門医まで片道50分の送迎が必要になったことから再移住を考え始めました。

夫婦が車を使わずに一週間過ごしてみると、バスは一日に数便、タクシーは片道3,000円近くかかり、近所の店だけでは日用品を揃えられなかったそうです。

免許を返した後を想像する

福岡へ移るとき、私は山の中や海辺の小さな町ではなく、福岡市を選びました。

自然の多い場所や広い家への憧れはあります。それでも、交通、病院、買い物だけは外せませんでした。

免許を返した後、歩いて食料品を買えるか。バスや地下鉄で病院へ行けるか。これは、老後の移住先を考えるなら最初に見ておきたいところです。

地図を見るだけでは足りません。候補地に見学に行くなら、あえて車を使わず、スーパー、病院、駅やバス停まで実際に行ってみる。そのとき初めて、住みやすさの中身が見えてきます。

確認したいのは距離だけではありません。バスの最終便は何時か。雨の日に歩ける道か。重い荷物を持って帰れるか。内科は近くても、眼科や整形外科などへ行くときはどこまで移動するのか。家の近くに店が一軒あるだけでは、毎日の生活は難しいでしょう。

地方移住そのものが悪いわけではありません。静かな場所で暮らすのも、都会を離れるのも、一つの選択です。

ただ、今の自分が便利に暮らせるかだけでなく、車を手放した後でも普通に暮すことが出来るか。

老後の移住では、そこを基準にするのは大切だと思います。

参考資料

[1]: https://gentosha-go.com/articles/-/80759 資産形成ゴールドオンライン 2026年8月16日掲載[2]: https://gentosha-go.com/articles/-/80973 THE GOLD ONLINE 2026年8月15日掲載

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